試合を見ていると、副審がタッチライン際でさっと旗を掲げる場面があります。あれが「オフサイドの旗」ですが、「どの瞬間に上げるのか」「なぜすぐ上がらない試合もあるのか」と疑問に思ったことのある方は多いでしょう。
オフサイドのルール自体はサッカー競技規則の第11条に定められていますが、副審が旗をあげるタイミングは「オフサイドポジションにいるだけ」ではなく「反則が成立したとき」という条件があります。この仕組みを知っておくと、試合中のジャッジを落ち着いて見られるようになります。
この記事では、副審が旗をあげるタイミングの基本・旗の示し方・旗がすぐ上がらないケース・少年少女の試合に出やすい場面を順に整理します。競技規則の一次情報(日本サッカー協会審判員のための実践的ガイドライン)をもとに確認した内容です。難しい用語は初出で補足していますので、保護者の方もぜひ最後まで読んでみてください。
オフサイドの旗をあげるタイミングの基本を整理する
まず、副審が旗をあげる「条件」と「手順」の基本をおさえます。ここがわかると、試合中の旗のシグナルが急に読み取りやすくなります。
旗を上げる前提:オフサイドが「成立」したとき
副審が旗をあげるのは「オフサイドポジションにいる選手がプレーに関与したとき」です。オフサイドポジション(守備側のゴールラインから2人目の相手選手よりゴールラインに近い位置)にいるだけでは反則になりません。
日本サッカー協会(JFA)の審判員のための実践的ガイドラインには、「オフサイドの位置にいた選手がパスを受けた場合、副審は競技者がボールに触れたときに旗を上げなければならない」と明記されています。つまり、旗を上げるのは「オフサイドポジションにいる選手がボールに触れた瞬間」が基本です。
一方、触れなくても反則になるケースがあります。オフサイドポジションにいる選手が「相手競技者を妨害する」と判断された場合です。このときも副審は、妨害が起きたと判断した瞬間に旗を上げます。いずれも「オフサイドポジションにいるだけ」ではなく「プレーへの関与」がポイントです。
旗を上げる際の動作:立ち止まって右手で真上に
副審が旗を上げるときは「その場で立ち止まり、競技のフィールドに面し、右手で旗を真上に上げる」のが基本動作です。JFAのガイドラインでは「急がず、過度にならないように落ち着いて旗を上げる」とされています。
旗を上げた後は、主審が笛を吹くまでそのまま旗を保持し続けます。主審が笛を吹いてプレーを止めたら、次は「フィールドのどの場所でオフサイドが起きたか」を旗の向きで示します。旗を降ろすのは主審の合図があってからです。主審の指示なく旗を降ろしてはいけません。
旗の向きでオフサイドの場所がわかる
旗を真上に上げてオフサイドを知らせた後、主審が笛を吹いたら副審は旗の向きを変えて「どのエリアで起きたか」を示します。向きの使い分けは3段階です。
旗を斜め上(高く)に向けるのは副審から遠いサイドのタッチライン付近のケース、旗を水平に保つのはフィールド中央付近のケース、旗を斜め下(低く)に向けるのは副審から近いサイドのタッチライン付近のケースです。少年サッカーの試合でも、旗の向きを見れば間接フリーキック(直接ゴールに入れられないフリーキック)の場所の目安がわかります。
1. オフサイド成立(選手がボールに触れた瞬間 or 妨害した瞬間)
2. 立ち止まって右手で旗を真上に上げ、主審が笛を吹くまで保持
3. 主審の笛の後、旗の向きでフィールド上のエリアを示す
- 旗を上げる条件は「オフサイドポジションにいること」ではなく「オフサイド反則が成立したこと」
- 旗はオフサイド成立の瞬間に真上に向けて上げる
- 主審が笛を吹くまで旗を降ろしてはいけない
- 旗の向き(高い・水平・低い)でフィールドのエリアを示す
- 最終的なオフサイドの判定は主審が行う
旗がすぐ上がらないケースと「ウェイト・アンド・シー」
試合中、副審がオフサイドだと判断しても旗をすぐ上げないことがあります。これには2種類の理由があり、混同しやすいので整理します。
ウェイト・アンド・シーとは何か
ウェイト・アンド・シー(Wait & See)とは、副審が「少し待って様子をうかがう」技術です。オフサイドポジションにいる選手がいても、その選手がプレーに関与するかどうかが確定していない場面で使われます。
たとえば、オフサイドポジションにいる選手がいる中で別の選手(オンサイド)がボールに向かっている場合、副審はすぐ旗を上げず、最終的にどの選手がボールに触れたかを確認してから判断します。先に旗を上げてしまうと選手がプレーを止めてしまうため、確認が取れてから旗を上げる方が正確な判定につながります。
アドバンテージが適用されるケース
主審が「アドバンテージ」(反則があったとしても守備側チームが不利になる場合にプレーを続けさせる判断)を適用した場合は、副審が旗を上げていてもプレーが続行します。
たとえば、オフサイドがあって副審が旗を上げたものの、守備側のゴールキーパーがボールをキャッチして素早く展開できる状況のときは、主審はプレーを止めずに続行させることがあります。このときは主審が「旗を降ろすよう」に合図を送ります。副審が旗を上げてもプレーが止まらない場面は、こうした流れで起きています。
8人制サッカーとオフサイドの旗:少年大会での運用
小学生年代の公式試合でよく使われる「8人制サッカー」(JFA公認のフォーマット)にも、11人制と共通の競技規則が基本的に適用されます。オフサイドのルールも同様で、副審がいる試合では旗によるシグナルが行われます。
ただし、少年年代の大会では副審を双方のチームから出す「相互審判」の形式が取られることがあり、審判経験の浅い方が担当する場合もあります。その場合、旗を上げるタイミングのずれが生じることがあります。試合後に「あのオフサイドの判定はどうだったのか」と感じたときは、まず競技規則の基本を確認してみるとよいでしょう。最新情報は日本サッカー協会(JFA)公式サイトの「ルールを知ろう」ページ(jfa.jp/rule/)でご確認ください。
| 場面 | 副審の対応 |
|---|---|
| 選手がボールに触れてオフサイド成立 | 触れた瞬間に旗を真上に上げる |
| 選手が相手を妨害してオフサイド成立 | 妨害が起きた瞬間に旗を上げる |
| オフサイドポジションにいるが関与しない | 旗を上げない |
| ウェイト・アンド・シーで様子を見ている | 関与が確定するまで旗を上げない |
| アドバンテージが適用された | 旗を上げても主審の合図でプレー続行 |
- ウェイト・アンド・シーは「選手の関与が確定するまで待つ」副審の技術
- アドバンテージ適用中は旗を上げていてもプレーが続くことがある
- 少年大会の相互審判では旗のタイミングにずれが出ることがある
- オフサイドポジションにいるだけでは旗は上がらない
子どもたちが試合で混乱しやすいオフサイドのシーンを整理する
少年少女の試合では、大人の試合以上に「これはオフサイドなのか」と保護者や選手が迷う場面があります。よくある具体的な状況を見てみましょう。
ゴールキック・コーナーキック・スローインはオフサイドにならない
ゴールキック、コーナーキック、スローインの場面では、オフサイドのルールが適用されません。たとえばゴールキックで蹴られたボールをオフサイドポジションにいる選手が受けても、オフサイドにはなりません。
この例外を知らないままだと、ゴールキックからゴール前の選手がボールを受けた場面で「オフサイドではないか」と感じることがあります。副審が旗を上げなかった場合は、このような例外ルールが適用されている可能性を考えてみてください。
オフサイドの判定基準はボールを蹴った瞬間の位置
オフサイドかどうかは「パスや送り出しのボールを蹴った瞬間の、受ける側の選手の位置」で判断します。ボールが飛んでいる途中で選手が前に出てもオフサイドにはなりません。
子どもたちの試合では、ボールを受けた瞬間に「前にいた」と見えても、蹴られた瞬間はオンサイドだった、という場面がよくあります。副審はパスを蹴った瞬間とオフサイドラインの両方を同時に確認する必要があるため、判定が難しい場面の1つです。
守備側の選手が2人以上いればオフサイドにはならない
オフサイドポジションとは「守備側のゴールラインから2人目の選手よりゴールラインに近い位置」です。多くの場合はゴールキーパーが1人目にいるため、実質的には「キーパー以外の守備側選手が1人以上いればオフサイドにならない」と整理できます。
守備側の選手がケガや退場などで少なくなった場合や、守備側が積極的に高い位置を保つ戦術を取っている場合は、オフサイドラインが通常より低い(ゴール寄り)位置になります。副審は常にこのラインを追いながら動いています。
・旗が上がらなくても、副審はオフサイドラインを常に確認しながら動いている
・ゴールキック・コーナーキック・スローインはオフサイドの例外
・「蹴った瞬間の選手の位置」が判断基準(受けた瞬間ではない)
- スローイン・ゴールキック・コーナーキックではオフサイドが適用されない
- パスを蹴った瞬間の位置が判断の基準になる
- 守備側の2人目の選手(多くはキーパー以外の1人)よりゴールラインに近い位置がオフサイドポジション
- 副審は常にオフサイドラインに合わせて動き続けている
旗のシグナルと主審の関係:判定を決めるのは主審
副審が旗を上げても、最終的なオフサイドの判定は主審が下します。この仕組みを知っておくと、旗が上がった後の流れが読みやすくなります。
主審が笛を吹かないと旗は降ろせない
副審は、旗を上げた後は主審が笛を吹いてプレーを止めるまで旗をそのまま保持し続けます。途中で旗を降ろすことは認められません。主審が笛を吹いてオフサイドを採用したら、副審は旗の向きでエリアを示し、その後旗を降ろします。
一方、主審が笛を吹かなかった場合や、主審から「旗を降ろすように」という合図(手のひらを下に向けて腕を動かすしぐさ)が来た場合は、副審はそれに従います。主審がオフサイドを採用しなかった理由はアドバンテージの適用や、主審が反則なしと判断したことが多いです。
主審が旗なしでオフサイドを取ることもある
副審が旗を上げる前に、主審が直接オフサイドと判断して笛を吹く場面もあります。副審がゴールラインや別の場所の確認(ボールアウトの判定など)に集中していてオフサイドラインの確認が遅れた場合でも、主審がオフサイドだと確認できれば判定を下すことができます。
これはオフサイドを含むすべての反則の最終判定が主審に委ねられているためです。副審のシグナルは主審をサポートするためのものです。
旗が上がってもプレーが続いたとき保護者が取りたい行動
観戦中に副審の旗が上がったのにプレーが続いていると、混乱することがあります。まずは主審の動きを見てください。主審が笛を吹けばプレーが止まります。主審が片手を横に動かしてプレーを続けさせていれば、アドバンテージかオフサイドを採用しなかった場面です。
試合中に審判に抗議するのはリスペクトの観点からも控えることが大切です。疑問があれば試合後に子どもを通じて確認するか、所属チームの指導者に聞いてみるとよいでしょう。
- 副審の旗シグナルは主審へのサポート情報であり、最終判定は主審が行う
- 主審の合図があるまで副審は旗を保持し続ける
- 主審がオフサイドを採用しない場合は旗を降ろすよう合図される
- 旗が上がってもプレーが続く場合はアドバンテージの可能性がある
- 試合中の審判への抗議は控えるとよい
少年少女サッカーでよく出る疑問をQ&Aで整理する
試合の場面で出やすい疑問を4つにまとめました。お子さんが試合に出ている保護者の方にとっても参考になると思います。
相手選手と並んでいてもオフサイドになる?
オフサイドポジションの基準は「守備側の2人目の選手よりゴールラインに近いかどうか」です。攻撃側と守備側の選手が並んでいる(同じライン上にいる)場合は、オフサイドにはなりません。
競技規則では、身体の一部(手と腕以外)がオフサイドラインよりも1mmでもゴール側にあればオフサイドポジションと判断されます。ただし、並んでいる状態では「ゴールラインに近い」とは見なさないため、反則にはなりません。この微妙な差の判断が副審には求められます。
ボールが守備側に当たってから受け取った場合はどうなる?
守備側の選手がボールをプレーした(意図してプレーした)後に、オフサイドポジションにいた選手がそのボールを受けた場合、オフサイドは適用されないのが基本です。これはボールが守備側の選手を経由したことで、「パスの起点」がリセットされるためです。
ただし、守備側の選手がクリアしようとしたのではなく「偶然ボールに当たっただけ」と主審が判断した場合は、このリセットが適用されないケースもあります。2022年以降の改正ルールでは「守備側選手が意図してプレーしたかどうか」の基準がより具体的に示されました。詳しくはJFA公式サイト(jfa.jp)の競技規則ページでご確認ください。
オフサイドになると間接フリーキックはどこから蹴る?
オフサイドの反則が成立した場合、間接フリーキック(直接ゴールを狙えないフリーキック)は「オフサイドの反則を犯した選手が反則を犯した瞬間にいた位置」から行われます。パスを蹴った位置ではなく、受けた選手のいた場所が基準です。
副審が「旗の向き」で示しているエリアは、このフリーキックを行う場所の目安を伝えているものです。遠い側(旗を高く)・中央付近(旗を水平)・近い側(旗を低く)の3段階で伝えます。
旗が高く上がっている → タッチラインから遠い側(フィールド中央寄り)
旗が水平 → フィールド中央付近
旗が低く向いている → タッチライン寄り(副審に近い側)
- 守備側と並んでいる場合はオフサイドにならない(同位置はセーフ)
- 守備側選手が意図してプレーした後はオフサイドがリセットされる
- 間接フリーキックはオフサイドの反則を犯した選手がいた位置から行う
- 旗の向きがフリーキックのエリアの目安を示している
まとめ
オフサイドの旗をあげるタイミングは「オフサイドポジションにいる選手がボールに触れた瞬間、または相手を妨害した瞬間」です。ポジションにいるだけでは旗は上がりません。旗が上がっても主審が採用しなければプレーは続き、最終判定は主審が行います。
まず次の試合でやってみてほしいのは「副審の動きを見続けること」です。副審がオフサイドラインに沿って動いていること、旗を上げるタイミング、旗の向きの変化を観察すると、ルールの仕組みが体感できます。
ルールの細かい疑問が出てきたときは、日本サッカー協会(JFA)の「ルールを知ろう」ページ(jfa.jp/rule/)を最初の確認先にしてみてください。お子さんの試合を見ながら「なぜそうなるのか」がわかると、観戦がより楽しくなります。

