デスマルケとは何か|小中学生が最初に押さえるべき動き

デスマルケの動きやポジショニングをイメージさせるサッカー練習風景画像 戦術とポジション

サッカーの試合で「ボールをもらえない」と感じる場面は、多くの小中学生が経験します。その多くは、マークを外すための動き出しが不足していることが原因です。スペイン語で「デスマルケ(desmarque)」と呼ばれるこのオフ・ザ・ボールの技術は、ドリブルやシュート技術と同じくらい大切な個人戦術のひとつです。

デスマルケとは、相手にマークされた状態から瞬間的な動きだしによってフリーになり、ボールを受けるアクションを指します。スペインのサッカー理論を中心に整理されている概念で、「ルプトゥーラ(突破)」と「アポージョ(サポート)」の2種類があります。どちらも、自分とボールを相手に同時に見させないことで一時的な有利を作り出す点が共通しています。

この記事では、デスマルケの意味と2種類の動き方、成功させるためのポイント、そしてジュニア・ジュニアユース年代の練習への取り入れ方を整理します。試合でもっとボールに関わりたい選手、子どもの動き出しについて理解を深めたい保護者の方に向けた内容です。

デスマルケとは何か、まずここを押さえる

デスマルケは「マークを外す動き全般」を指すわけではなく、「マークがついている状態からのアクション」という点が重要です。すでにフリーな状態で動いても、それはデスマルケとは呼びません。この前提を知っておくと、練習中に意図を持って取り組めるようになります。

デスマルケの語源と意味

デスマルケはスペイン語の「desmarque」が語源で、直訳すると「マークを外すこと」を意味します。スペインサッカーの育成現場では攻撃における個人戦術のひとつとして体系化されており、日本でも指導者の間で広く使われるようになりました。

ポイントは「瞬間的」という部分です。ずっと動き続けてマークを外すのではなく、静止状態からタイミングよく急加速することで相手の虚をつきます。この一瞬の動きが、有利な状況でのボール受けにつながります。

オフ・ザ・ボールとの関係

サッカーでは、ボールを持っている時間よりも持っていない時間のほうが圧倒的に長くなります。その「ボールを持っていない時間(オフ・ザ・ボール)」に何をするかが、試合の質を大きく左右します。デスマルケはオフ・ザ・ボールの動きを代表するアクションのひとつです。

小中学生年代では、ボールを持っている選手のドリブルや技術に目が向きがちですが、ボールを持っていない選手の動き出しが試合全体のテンポと得点機会を作ります。JFAの育成方針でもオフ・ザ・ボールの質を高めることは重要な課題とされています。

デスマルケとサポートの違い

似た概念として「サポート」があります。サポートは「味方やチームを助けるために行う動き」全般を指すのに対し、デスマルケは「相手のマークを外すことを目的としたアクション」という点で区別されます。

たとえばボール保持者に近づく動きでも、マークがついた状態から一瞬フリーになって受けに行く動きはデスマルケ・アポージョと呼ばれます。マークが外れている状態でただ近づくだけの動きはサポートの概念に近くなります。この区別を持つと、練習の狙いが明確になります。

デスマルケの3つの前提
・マークがついている状態から始まるアクションである
・「静止→急加速」の緩急が効果を生む
・ボールが来なくても動き続けることで味方の選択肢を作る
    >デスマルケはスペイン語で「マークを外すこと」を意味する>すでにフリーな状態での動きはデスマルケと呼ばない>静止状態から瞬間的に加速することで相手の反応を遅らせる>オフ・ザ・ボールの代表的な個人戦術として育成年代で重視されている

2種類のデスマルケを理解する

デスマルケにはルプトゥーラ(突破)とアポージョ(サポート)の2種類があります。どちらを選ぶかは、相手の守備状況や味方との距離によって判断します。この2種類を状況に応じて使い分けられるようになると、試合での関わり方が大きく変わります。

ルプトゥーラ(突破のデスマルケ)

デスマルケ・ルプトゥーラは、相手ディフェンスラインの背後のスペースへ向かって突き抜ける動きです。日本語では「裏抜け」と表現されることも多く、ゴールに直結するシーンで使われます。

この動きで重要なのは「ボールが来なくても裏へ突き抜ける」という姿勢です。ボールが出てこなかった瞬間に足を止めてしまうと、次の動き出しが遅れるだけでなく、オフサイドポジションで止まる可能性もあります。連続して動き続けることで味方にとってのパスコースを保ち続けます。

オフサイドへの注意も欠かせません。ボール保持者がパスを出せるタイミングで動き出すことが基本です。早すぎる動き出しはオフサイドに直結するため、ボール保持者の顔が上がった瞬間、もしくは蹴れるタイミングに合わせて加速する習慣をつけるとよいでしょう。

アポージョ(サポートのデスマルケ)

デスマルケ・アポージョは、ボール保持者に近づいてフリーな状態でパスを受けに行く動きです。相手の背後にスペースがなく前進できない場面で使います。この動きによって、プレッシャーを受けている味方に一時的な2対1の数的有利を作り出します。

ただし、単純にボール保持者へ向かって真っすぐ下りるだけでは効果が薄くなります。斜めのパスコースを作ることで、受けた後の視野が広がり、守備側を動かして縦パスのスペースも生まれやすくなります。ボール保持者との距離が近すぎる状態からアポージョに入ると、スペースが消えてプレーが密集するため、一度距離を取ってから動き出す順序が大切です。

どちらを選ぶかの判断基準

2種類の使い分けは、大まかに「前のスペースがあるか」で判断できます。相手の守備ラインの背後にスペースがある、または守備が高めのラインを設定している場面ではルプトゥーラが有効です。密集した場面や守備が下がっている場面ではアポージョで足元の受け口を作ります。

試合中に一種類しか使えないと、相手に読まれやすくなります。両方を持つことで相手守備のポジションに応じた動き出しができるようになり、チーム全体の攻撃がスムーズになります。

種類動きの方向主な目的注意点
ルプトゥーラ相手ゴール方向(背後)裏抜け・得点機会の創出オフサイドのタイミングに注意
アポージョ味方ゴール側(足元)数的有利・パスコースの確保斜めに入り、距離を保ってから動く
    >ルプトゥーラは相手ディフェンスラインの背後を突く動き>アポージョはボール保持者に近づき2対1を作る動き>状況に応じて2種類を使い分けることが大切>どちらも「マークがついた状態からの動き出し」という前提は共通

デスマルケを成功させるための5つのポイント

デスマルケの概念を知っていても、試合でうまく活かすには動き方のコツが必要です。特に小中学生年代では、ボールを見るだけになりやすく、ディフェンスの位置や味方の状況を同時に把握する習慣がつくと、動き出しの精度が大きく上がります。

緩急をつけた動き出し

デスマルケで最も重要なのは「常に全速力で走らないこと」です。ずっと速く動いていると相手もついてこられます。一度ゆっくり動いて存在感を消し、そこから一気に加速することで相手の反応を遅らせます。この緩急の差が、フリーになれる時間を生み出します。

小学生年代では全力で走り続けようとする選手が多いですが、「ゆっくり歩いてから急に走る」という意識を練習の中で繰り返すと、試合でも自然に使えるようになります。保護者の方が観戦する際も、動き出し前の「ためを作る動き」に注目すると子どもの成長が見えやすくなります。

逆方向へのフェイントを先に入れる

少年少女サッカーでデスマルケの動きやポジショニング練習を表すイメージ画像

受けたい場所と逆方向にあらかじめ動いておくと、相手ディフェンスをその方向へ引きつけることができます。その後、本当に受けたい方向へ鋭く動き出すことで、マークがずれた一瞬を作り出します。

このフェイントは大きな動きである必要はありません。重心をわずかにずらす、一歩だけ逆方向に出るといった小さな動作でも十分に効果があります。むしろ大げさすぎるフェイントは相手に意図が伝わることもあるため、自然な動きの中に組み込むとよいでしょう。

ボール保持者のタイミングに合わせる

デスマルケのタイミングは「早すぎても遅すぎても機能しない」点が難しいところです。最も効果的なタイミングは、ボール保持者がボールをコントロールして顔を上げた瞬間です。この瞬間に動き出すことで、パスが出てくる可能性が最も高くなります。

ボール保持者の状況を常に確認する習慣が必要です。「顔が上がった瞬間に走る」という合言葉を練習で使うと、小学生年代でも身につけやすくなります。

デスマルケ成功の5ポイント
1. ゆっくり→急加速の緩急をつける
2. 受けたい方向と逆にフェイントを入れる
3. ボール保持者が顔を上げた瞬間に動き出す
4. 相手マーカーの視野から外れた位置を取る
5. ボールが来なくても連続して動き続ける

相手の視野から外れる位置取り

相手ディフェンスがボールと自分を同時に見られない位置に立つことも、デスマルケの効果を高めます。ディフェンスの背後や側方に立つことで、相手が片方しか見られない状況を作り出せます。

ディフェンスが常にボールを追っているのであれば自分への注意が薄れます。逆に自分だけを見ているようであればボール保持者が動きやすくなります。この駆け引き自体がチームの攻撃を助けているため、デスマルケは「フリーになる動き」であると同時に「スペースを作る動き」でもあります。

ボールが来なかった時こそ連続で動く

デスマルケを試みてボールが出てこなかった場合でも、止まらずに次の動きに入ることが大切です。足を止めてしまうとパスコースが減り、ゴール前ではオフサイドポジションで止まることにもなりかねません。

ルプトゥーラからアポージョへ切り替える、あるいは別のスペースへ再び抜け出すといった連続した動きが、相手守備の組織を崩す力になります。一度の動き出しで完結させようとせず、動き続ける姿勢を習慣にするとよいでしょう。

    >緩急のある動き出しが相手の反応を遅らせる>逆方向へのフェイントで相手を引きつけてから本方向へ動く>ボール保持者が顔を上げた瞬間が最適なタイミング>ボールが来なくても止まらず連続して動き続ける

ジュニア・ジュニアユース年代への取り入れ方

デスマルケは高度な戦術ではありますが、基本的な考え方は小学生から少しずつ取り組めます。年代に応じてアプローチを調整しながら積み重ねることで、中学生年代では自然に使えるようになります。

小学生年代(U-12)での取り組み方

小学生年代では、まず「フリーになるために動く」という感覚を身につけることが優先です。難しいスペイン語の概念よりも「ボールを受けたい場所と逆に一度動いてみよう」「顔が上がったら走ろう」といったシンプルな言葉でイメージを作るとよいでしょう。

2対2や3対3の小さいグリッドを使った練習が効果的です。狭いスペースの中でマークを外す経験を繰り返すことで、状況判断と動き出しのリズムが身についていきます。保護者の方は練習後に「今日、マークを外して受けられた場面あった?」と声をかけると、子ども自身が動き出しを意識するきっかけになります。

中学生年代(U-15)での発展

中学生になると対人の強度や試合スピードが上がるため、緩急の差をより意識した動き出しが求められます。ルプトゥーラとアポージョの使い分けを状況判断と結びつけながら練習で反復することで、試合の中で自動的に選択できるようになります。

この年代では「相手の視野から外れるポジション取り」も意識できるようになります。守備ラインとボールを両方見える位置に立ち、ディフェンスのポジションを読みながら動き出すという、より複雑な判断力の土台がここで育ちます。ジュニアユース年代のクラブや中学校のサッカー部では、戦術的な練習メニューの中でデスマルケを明示的に扱うケースも増えています。

デスマルケが育てる総合的な力

デスマルケを継続的に練習することで、動き出しの技術だけでなく、周囲の状況を観察し続ける認知力や判断力も育ちます。ボール保持者の状態・相手の位置・スペースの有無を同時に処理する経験が積み重なることで、サッカー全体の理解が深まります。

また、デスマルケが機能するチームでは、ボールを持っていない選手が積極的に動き続けるため、チーム全体の運動量と攻撃の連動性が上がります。一人ひとりの動き出しへの意識が、チームとしての攻撃の質に直結するという意味で、個人戦術とチーム戦術をつなぐ架け橋にもなります。

年代別の取り組みポイント
U-12:「逆に動いてから本方向へ」「顔が上がったら走る」のシンプルな習慣づくり
U-15:ルプトゥーラとアポージョの使い分け・相手の視野を読んだポジション取り
    >小学生年代はシンプルな言葉でフリーになる感覚を積む>中学生年代は2種類の使い分けと状況判断を結びつける>認知力・判断力・連動性など複合的な能力が育つ>個人戦術の向上がチーム全体の攻撃の質に影響する

保護者が知っておきたいデスマルケの見方

観戦の場面で子どものデスマルケを見つけられると、試合全体の見方が変わります。ゴールシーンだけでなく、動き出しの質にも目を向けると、成長の変化に気づきやすくなります。

どこに注目して観戦するか

デスマルケは「ボールが来ない場面」にこそ表れます。観戦時はボールだけを追うのではなく、ボールを持っていない自分の子どもがどのように動いているかを意識してみましょう。ディフェンスの横やうしろに動いてからパスを受けた場面、一度逆方向に動いてから切り返した場面がデスマルケの実践です。

ボールが出てこなかった場面でも「止まらずに動き続けていたか」を見るのもポイントです。一度動き出して足を止めず、次の動きに連続していたなら、その意識が育っているサインです。試合後に「あそこの動き出しよかったね」と具体的に伝えると、子どもの次の意欲につながります。

練習でサポートするためのヒント

自主練でもデスマルケの感覚は磨けます。2人でパス交換をする際に、パスを出す直前に受け手が一度逆方向に動いてから戻ってパスを受けるという練習を取り入れると、緩急と逆方向フェイントの基本が身につきます。壁パスや親子での自主練に取り入れやすいメニューです。

「顔を上げたときに動く」練習として、パスを出す前に声や合図をなくしてパスを出すタイミングを変えると、受け手が自然に「目で判断する」習慣がつきます。こうした工夫は費用をかけず、公園や狭いスペースでも実践できます。

ミニQ&A

Q. デスマルケはどの年齢から練習できますか?
A. 基本的な感覚は小学校低学年から少しずつ身につけられます。まずは「逆に動いてから受ける」という動作を遊びの中で繰り返すことが入り口になります。言葉の概念を教えるより、動く体験を先にするとスムーズです。

Q. デスマルケができないと試合でどうなりますか?
A. マークを外せないとボールをもらえる場面が減り、ドリブル突破に頼る状況が増えます。相手が強くなるほど、動き出しなしでのボール受けは難しくなります。チーム全体でオフ・ザ・ボールの意識が低いと、ボール保持者の選択肢が減り攻撃が停滞しやすくなります。

    >観戦時はボールではなく子どもの動き出しに注目する>止まらず連続して動いていたかがチェックポイント>親子の自主練でも逆方向フェイントの感覚を磨ける>低学年から「逆に動く」体験を積み重ねることが基礎になる

まとめ

デスマルケとは、マークがついた状態から瞬間的に動き出してフリーになるオフ・ザ・ボールの個人戦術で、ルプトゥーラ(背後への突破)とアポージョ(足元へのサポート)の2種類があります。

まず試してほしいのは「受けたい方向と逆に一歩動いてから切り返す」というシンプルな動きです。パス練習のついでに取り入れるだけでも、緩急をつける感覚が少しずつ育ちます。

試合の中で「うまくボールをもらえない」と感じたときは、動き出しのタイミングと方向を一度見直してみましょう。ボールが来なくても動き続ける姿勢が、チームの攻撃全体を動かします。

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