バルキーンとドルフィンは、同じサッカー審判用ホイッスルでありながら、音の大きさや開発された目的がはっきりと分かれています。どちらもモルテンの製品ですが、生まれた背景をたどると、それぞれの役割の違いが見えてきます。
少年サッカーの大会や練習試合では、保護者や指導者が審判を担当する場面も少なくありません。笛を任されたとき、今の笛のままでよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。ホイッスルの選び方ひとつで、試合中の吹きやすさや、選手への合図の伝わり方が変わってきます。
この記事では、モルテンが手がけるバルキーンとドルフィンの違いをまとめ、少年サッカーの現場でどちらを選ぶとよいかを紹介します。音の特性から選び方、日々のお手入れまで、笛選びに迷う方の参考になれば嬉しく思います。
バルキーンとドルフィンの基本的な違いとは
バルキーンとドルフィンは、どちらもモルテンのサッカー審判用ホイッスルですが、位置づけと開発の考え方が異なります。まずは、それぞれがどのような製品として作られてきたのか、基本的な違いを比較します。
バルキーンはどのようなホイッスルか
モルテン公式サイトでは、バルキーンをサッカー審判用ホイッスルの最高峰と位置づけています。バルキーンは2009年に発売され、開発期間は2年に及びます。
Jリーグの公式用具として採用されており、2010年にはグッドデザイン賞を受賞しています。名称は、オランダ語で鷹を意味するVALKと、英語で鋭いという意味のKEENを組み合わせた造語です。
太くキレのある高音を大きな音量で発生させる設計のため、誰でもすぐに吹きこなせるホイッスルではないと、モルテンの資料でも紹介されています。とっさに構えやすいよう、指に挟んで使うグリップが付属している点も特徴です。
モルテンの資料では、開発にあたって多くの審判から意見を聞き、100個以上の試作品を作りながら、共鳴管の長さを0.1mm単位で調整していったと紹介されています。実際の試合でも試し、納得のいくところまで音を仕上げていった経緯があるホイッスルです。
ドルフィンはどのようなホイッスルか
モルテンは2000年からホイッスルの自社開発を本格的に始め、その代表的な製品がドルフィンプロです。ドルフィンプロは、特定の競技に絞らず、スポーツ全般で使える汎用ホイッスルという位置づけです。
一方、サッカー審判向けのスタンダードモデルとして、2014年からドルフィンFが販売されています。ドルフィンFは、音の大きさよりも吹きやすさを重視して作られたモデルです。
ドルフィンの系統には、バスケットボール用のドルフィンBなど、競技別に分かれたモデルもあります。少年サッカーの現場では、サッカー専用にチューニングされたドルフィンFを選ぶ形が基本になります。
ドルフィンプロは2000年の発売以来、長く使われてきたモデルで、体育の授業や地域のスポーツ活動でも見かける機会が多いホイッスルです。汎用モデルならではの扱いやすさも、根強く選ばれている理由のひとつです。
名称や開発の背景にある違い
バルキーンは、競技別に音をチューニングした最初のモデルとして開発されました。以前は競技を問わず同じ構造のホイッスルが使われていましたが、屋外で握って走るサッカーと、屋内でくわえて走るバスケットボールでは、必要な音や持ち方が違うという考え方から、競技別のモデルが生まれています。
ドルフィンプロは、この競技別チューニングが登場する前から使われてきた汎用モデルという位置づけになります。審判用ホイッスルの多くは、コルク玉を使わないビートホイッスルの構造を採用している点も、両モデルに共通します。
審判用ホイッスルの音の分類
モルテンの資料では、ホイッスルを音色で2種類に分類しています。ひとつは、内部の玉が回転して強弱を生み出すピーホイッスル、もうひとつは、複数の共鳴管でうねりを生み出すビートホイッスルです。
審判用には、大きな音を出しやすく、玉が引っかかって鳴らなくなる心配が少ないビートホイッスルが多く使われています。バルキーンとドルフィンも、このビートホイッスルの系統に含まれるホイッスルです。一方、体育の授業や練習の合図で使うコーチング用ホイッスルには、強弱の表現がつけやすいピーホイッスルが向いているとされています。
| 項目 | バルキーン | ドルフィンF |
|---|---|---|
| 位置づけ | サッカー審判用エリートモデル | サッカー審判用スタンダードモデル |
| 発売年 | 2009年 | 2014年 |
| 音の大きさ(1m) | 113dB | 110dB |
| 周波数 | 4.15kHz&3.67kHz | 4.15kHz&3.67kHz |
| 特徴 | Jリーグ公式用具、2010年グッドデザイン賞 | 吹きやすさを重視した設計 |
| 向いている場面 | 公式戦・大歓声の会場 | 練習試合・初めての審判 |
- バルキーンはサッカー審判用の最高峰モデルで、Jリーグの公式用具になっている
- ドルフィンプロは競技を問わない汎用モデル、ドルフィンFはサッカー専用のスタンダードモデル
- バルキーンは2009年、ドルフィンFは2014年に発売されている
- どちらもコルク玉を使わないビートホイッスルの構造を採用している
- 公式戦の大歓声を意識するならバルキーン、練習試合や初めての審判ならドルフィンFが選択肢になる
音の特性を比較する(音圧・周波数・音域)
バルキーンとドルフィンでは、音の大きさや音域にも違いがあります。この章では、モルテン公式が示す数値をもとに、音の面での違いを比較します。
音の大きさの違い
モルテン公式オンラインショップでは、バルキーンの音の大きさを1m地点で113dBと示しています。同じ条件で計測したドルフィンFの音の大きさは110dBです。
数値の差はそれほど大きくありませんが、バルキーンは大歓声の会場でも音が通るよう設計された製品です。モルテンが公開する資料では、バルキーンの音圧を10cm地点で125dBと紹介しており、大きな音を出せる設計のため、軽く吹くと音がかすれる場合があるという注意点も示されています。
ドルフィンFも同様に、大きな音を出せるように設計されているため、軽く吹いた時に音がかすれることがあると商品ページに記載があります。どちらのモデルも、はっきりと息を吹き込む吹き方をしておくと安心です。
周波数・音域の違い
商品ページの記載では、バルキーンとドルフィンFはどちらも4.15kHzと3.67kHzという周波数を持つホイッスルです。モルテンの資料によると、バルキーンは4オクターブの音域を持ち、上下に張り出したフィンによって倍音を増やし、太くキレのある音色を作り出しています。
ドルフィンプロについては、色違いやマウスグリップ付きモデルなど、いくつかのバリエーションがあることも紹介されています。マウスグリップの有無によって、歯でしっかりホールドできるかどうかが変わり、吹きやすさの感じ方にも影響します。
少年サッカーの現場で音の違いをどう捉えるか
大きな声援が飛び交うプロの会場と比べると、少年サッカーの試合や練習で、音が届きにくい場面はそれほど多くありません。それでも、複数のコートで同時に試合が行われる大会では、隣のコートの笛の音と重なることがあります。
音色の異なるホイッスルを使い分けると、自分の笛の音を選手に届けやすくなる場面もあります。屋外の広いグラウンドで使う場合と、体育館のような屋内のフットサルコートで使う場合とでは、音の響き方も変わってくるため、使用する会場に合わせて選ぶという考え方もあります。
持ち方や構えやすさに関わる工夫

モルテンの資料によると、バルキーンには「フリップグリップ」と呼ばれるパーツが付いています。中指と薬指でグリップを挟み、手首を素早く返すことで、握った状態から瞬時に吹く体勢へ切り替えられる仕組みです。
カードを提示したり、記録用のペンを持ったりする場面でも、握りを開いたときにホイッスルが落ちにくいように工夫されています。とっさの判定が求められる試合で、笛をすぐに構えられるかどうかは、音の大きさと並んで審判にとって気になるポイントです。
ドルフィンFの音の大きさ:110dB(1m)
周波数はどちらも4.15kHz&3.67kHz
バルキーンは4オクターブの音域を持つ設計
- バルキーンは1m地点で113dB、ドルフィンFは110dBという数値が公表されている
- 周波数はどちらも4.15kHzと3.67kHzで共通している
- バルキーンは4オクターブの音域を持つよう設計されている
- 会場や試合の状況に合わせて音色を選ぶという考え方もある
- バルキーンのフリップグリップは、瞬時に吹く体勢へ切り替えやすい工夫である
少年サッカーの現場でどちらを選べばよいか
ここまでの違いを踏まえて、少年サッカーの現場でどちらを選ぶとよいか、立場別に整理します。
保護者審判として笛を任された場合
少年サッカーの大会では、保護者が4級審判として笛を吹く場面があります。この場合、大きな音を出しやすいバルキーンよりも、吹きやすさを重視したドルフィンFのほうが扱いやすいと感じる方もいます。
モルテンの資料でも、ドルフィンFは音量よりも吹きやすさを重視したスタンダードモデルと位置づけられています。初めて笛を吹く方は、この点を選ぶ基準の一つにするとよいでしょう。
審判の資格を取ったばかりの保護者は、まず短い時間の練習試合から担当することが多いため、価格を抑えつつ扱いやすいモデルから始めるという考え方も選択肢になります。
指導者やクラブの審判担当が選ぶ場合
クラブの指導者が公式戦の主審・副審を務める場合、Jリーグの公式用具でもあるバルキーンを選ぶ考え方もあります。ただし、バルキーンは大きな音を出せるよう設計されているため、軽く吹くと音がかすれることがあると、モルテンの商品ページに記載があります。
吹き方に慣れが必要な点は、選ぶ前に知っておくと安心です。普段から公式戦の副審を担当する機会が多い指導者であれば、練習の段階からバルキーンの吹き方に慣れておくと、本番の試合でも落ち着いて笛を扱いやすくなります。
大会や所属団体の指定を確認する
大会によっては、使用する用具について大会要項で案内している場合があります。所属する団体や大会運営から、笛に関する指定や注意事項が示されている場合は、その内容を優先して確認しておくと安心です。
特に、複数の会場をかけもちする大規模な大会や、都道府県サッカー協会が主催する公式戦では、審判に関する取り決めが細かく定められていることもあります。最新の運用は、大会要項や所属協会の公式案内で確認しておくとよいでしょう。
審判経験や担当する年代に合わせる考え方
少年サッカーでは、小学生の大会と中学生の大会で、コートの広さや選手の人数が異なる場合があります。担当する年代や大会規模に応じて、音の届きやすさを重視するか、吹きやすさを重視するかを考えておくと、当日の判断に迷いにくくなります。
審判の経験が浅いうちは、ドルフィンFのような吹きやすいモデルから始め、慣れてきたらバルキーンを試してみるという段階的な選び方もあります。無理に大きな音を出そうとせず、自分の吹き方に合ったモデルを選ぶことが、安定した笛の音につながります。
Q. バルキーンとドルフィンは併用できますか。
A. 大会や練習試合の状況に応じて使い分ける審判もいます。ただし、大会側から使用する笛の指定がある場合は、その案内を優先して確認しておくと安心です。
Q. 初めて笛を吹く保護者にはどちらが向いていますか。
A. 吹きやすさを重視したドルフィンFから試すと、音を出しやすく感じられる場合があります。まずは短時間の練習で、自分に合う吹き方を確かめておくとよいでしょう。
- 保護者審判にはドルフィンFのほうが扱いやすいと感じられる場合がある
- 公式戦の副審を頻繁に担当する指導者はバルキーンに慣れておく方法もある
- 大会によっては用具の指定や注意事項が大会要項に示されている
- 迷ったときは所属団体や大会運営の公式案内を優先して確認する
- 審判経験が浅いうちは吹きやすいモデルから始め、慣れに応じて選び直す方法もある
選ぶときの注意点とお手入れの仕方
最後に、笛を選ぶときの注意点と、日々のお手入れで気をつけたいポイントをまとめます。長く使う道具だからこそ、購入後の扱い方も押さえておきましょう。
価格帯とモデルバリエーション
モルテン公式オンラインショップでは、バルキーンとドルフィンFのどちらにも、単体モデルと、ロープや調整リングなどが付属するプロセットが用意されています。バルキーンには、限定カラーのブルーエディションなど、複数のバリエーションもあります。
価格や取り扱いモデルは変わることがあるため、購入前に公式サイトで最新の情報を確認しておくと安心です。兄弟で審判を担当する家庭では、色違いのモデルを選んでおくと、持ち物を取り違えにくくなります。
ドルフィンの系統には、サッカー用のドルフィンFのほかに、汎用モデルのドルフィンプロもあります。用途を絞らず、複数のスポーツで使い回したい場合は、ドルフィンプロも選択肢に入ってきます。
吹きやすさとお手入れのしやすさ
審判用ホイッスルの多くは、コルク玉を使わないビートホイッスルの構造を採用しています。コルク玉のホイッスルと違い、唾液で玉が重くなって回転しにくくなるといった心配が少なく、水洗いもしやすい点が特徴です。
使用後にサッと洗える構造は、衛生面を気にする保護者にとっても扱いやすいポイントです。バルキーンやドルフィンFは、大きな音を出せるよう設計されているため、軽く吹くだけでは音がかすれることがあります。吹き始めは、はっきりと息を吹き込む練習をしておくと、試合本番でも安定した音を出しやすくなります。
試合前の空いた時間に、数回だけ軽く吹いて音の出方を確かめておくと、いきなり本番で戸惑うことを避けやすくなります。慣れないうちは、家族の前で吹く練習をしておくのもひとつの方法です。
衛生管理と保管の注意点
口にくわえて使う道具のため、使用後は水洗いして清潔に保つことが大切です。ロープや調整リングが付属するモデルもあるため、破損がないか定期的に確認しておくと安心です。
兄弟でチームが違う場合など、複数の笛を使う家庭では、モデルごとに保管場所を分けておくと管理しやすくなります。試合や練習のたびに持ち出す道具のため、他の審判用品と一緒にまとめておくと、忘れ物を防ぎやすくなります。長期間使わないときは、水気をしっかり拭き取ってから保管しておくと安心です。
購入前に確認しておきたいこと
モデルによって音の大きさや吹き方に向き不向きがあるため、可能であれば試し吹きをしてから選ぶと失敗しにくくなります。モルテンの公式サイトでは、商品ごとに音源が公開されているため、購入前に実際の音を聴き比べておくと、イメージとの差を減らしやすくなります。
最新の価格や取り扱いモデル、カラーバリエーションは、モルテン公式サイトの商品ページで確認しておくとよいでしょう。
ロープや付属品の破損を定期的に確認する
試し吹きや音源の聴き比べをしてから選ぶ
最新価格・モデルはモルテン公式サイトで確認する
- 単体モデルとプロセットがあり、限定カラーも用意されている
- コルク玉を使わない構造で、水洗いなどのお手入れがしやすい
- 大きな音を出す設計のため、軽く吹く練習を重ねておくと安心
- 破損の確認や乾燥など、日々の保管にも気を配っておく
- 最新の価格やモデル、カラーは公式サイトで確認しておく
まとめ
バルキーンとドルフィンの違いは、音の大きさと、開発された目的の違いに集約されます。バルキーンは大歓声の会場でも通る音を追求したエリートモデルであり、ドルフィンFは吹きやすさを重視したスタンダードモデルです。
まずは、自分が審判を務める場面を思い浮かべながら、ドルフィンFとバルキーンを試し吹きしてみることから始めてみましょう。公式サイトで音源を聴き比べておくと、当日のイメージも掴みやすくなります。
少年サッカーの現場に立つすべての方が、自分に合った1本を見つけ、自信を持って笛を吹けるようになることを願っています。試合ごとの発見も楽しみながら、審判という役割に向き合っていただければと思います。

